【犬の病気】内分泌・ホルモン系の病気

内分泌・ホルモン系の病気(糖尿病・甲状腺機能低下症・副腎皮質機能低下症(アジソン病)・副腎皮質機能亢進症)

糖尿病
【症状】
人間同様、インスリンというホルモンの不足や働きが悪くなる事で引起される病気です。インスリンとは膵臓から分泌され、血中の糖を細胞内に吸収させる働きがあります。その働きにより、血糖値の安定を図るのですが、それが出来なくなる事により、血糖値の過度な上昇に繋がります。症状としては、
・多飲多尿
・体重減少
などになります。

糖尿病には主に2種類あり、
膵臓の機能低下により、インスリンが分泌しない
「Ⅰ型糖尿病」と、
インスリンは作られるが十分に分泌されなかったり、
細胞がうまく機能しない「Ⅱ型糖尿病」
があります。

圧倒的に多いのは「Ⅰ型糖尿病」になります。
Ⅱ型糖尿病は、人間と猫に多く、人間の場合、肥満と運動不足などの生活習慣の乱れが多いと言われています。

こちらも人間同様、糖尿病が進行する事で一番恐ろしいのが合併症です。主な合併症としては、
■白内障
■糖尿病性腎症
■肝疾患
■細菌感染症など
が挙げられ、命に関わる事もあります。

【原因】
・高齢によるもの
高齢になると基礎代謝が下がり、食事量を調整しないと徐々に
過食気味になる可能性があります。
・早食い、ドカ食い
食事の度に大量のインスリンの分泌が一気にされる事で、
細胞への吸収が鈍り、血中に残った糖が蓄積してしまいます。
その蓄積が進行する事で糖尿病に発展します。
・遺伝
肥満になりやすい犬種は特に気を付けたいところです。
代表的な犬種としては、Mシュナウザー、ビーグル、ダックスフント、プードルなどが挙げられます。

【治療】
Ⅰ型糖尿病
治療では血糖値をコントロールするために、インスリンが使われます。インスリンを打つ事になると、一生続ける事になります。
Ⅱ型糖尿病
食生活習慣の見直しが必須となります。
合併症を併発している場合は、その治療も併せて行います。

【予防】
バランスのよい食事内容と適度な食事量、適度な運動を心がけ、肥満にならないように注意しましょう。

 

甲状腺機能低下症
のどにある甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが減少したり、機能が弱まることで発症する病気です。

症状としては、
・毛艶が悪くなる
・体の脱毛(左右対称)
・動作が鈍くなる
・顔や全身のむくみ(皮膚が厚くなる)
・脱毛部が黒ずむなどの色素沈着
・心拍数、血圧の低下
・脂漏症や膿皮症などの皮膚疾患
などがあります。

【原因】
免疫機能が過剰になり、自分の体の一部である甲状腺を攻撃してしまい、
機能が低下してしまう「自己免疫疾患」と、明確な原因は分かってはいませんが、
甲状腺が萎縮してしまうことで
ホルモンの作用が低下してしまう「甲状腺の萎縮」の2種類があります。
多くは「自己免疫疾患」になります。
 
「甲状腺の萎縮」については、遺伝が要因のひとつとして考えられてもいるようです。
犬種としてはアフガンハウンド、アイリッシュセッター、ゴールデンレトリバー、
ラブラドールレトリバー、シェットランドシープドッグ、
ボクサー、チャウチャウ、ブルドッグ、プードル、ダックスフンドなどに多いようです。

クッシング症候群の影響
副腎皮質ホルモンの異常で起こるクッシング症候群の合併症で発症
することがあります。

【治療】
甲状腺ホルモン製剤の投薬になります。投薬は一生涯続けます。
投薬量のコントロールは非常に重要になります。
投薬量を間違えると、逆に甲状腺機能亢進症(代謝が上がりすぎて心拍、脈拍、血圧、体温が過剰に上昇してしまう)に発展してしまう可能性があります。

クッシング症候群(下記「副腎皮質機能亢進症=(クッシング症候群)参照)など、別の疾病によって甲状腺機能低下症が引き起こされている場合は、それらの基礎疾患への治療が施されます。
副腎皮質機能低下症=アジソン病
【症状】
腎臓の上にある副腎皮質ホルモンの分泌が減少することにより発症する病気です。
副腎皮質ホルモンには「アルドステロン」や「コルチゾール」といった種類のホルモンがあり、
炎症の制御、炭水化物の代謝、タンパク質の異化、血液の電解質レベル調整、
などを司る役割があります。

症状としては、
元気が無くなる
食欲不振
体重減少
下痢
嘔吐
多飲多尿
があります。

【原因】
病因は原発性(副腎自体が異常)と二次性(他の器官の異常に続いて起こる)に分けられます。

原発性による副腎破壊の原因としては自己免疫疾患、感染症、出血、悪性腫瘍などが挙げられます。
またクッシング症候群の投薬により副腎を破壊することもあります。

二次性では下垂体または視床下部が腫瘍、創傷、炎症などの原因により破壊され、
副腎を刺激するホルモンの分泌が低下して、副腎が萎縮してしまいます。

遺伝によるもの
代表的な犬種としては、グレートデン、ロットワイラー、スタンダードプードル、
ウェストハイランドホワイトテリアなどにやや多く見られます。

【治療】
多くは不足している副腎皮質ホルモンを補うため、
鉱質コルチコイド製薬を一生涯続けて投薬します。

【予防】
確固たる予防方法はありません。
早期発見・早期治療が何よりも大切ですので、愛犬の様子をよく観察して、少しでも症状が見られたら、すぐにかかりつけの獣医さんに相談しましょう。

副腎皮質機能亢進症=クッシング症候群
【症状】
腎臓の上にある副腎という分泌器官で作られるホルモンに副腎皮質ホルモン(コルチゾール)があります。
このホルモンは、炎症の制御、炭水化物の代謝、タンパク質の異化、血液の電解質のレベル、
免疫反応などを司るホルモンになります。このホルモンが慢性的に多くなると、引き起こされる病気になります。
症状としては、
多飲多尿
食欲増加
おなかがふくれる
毛艶が悪くなる
体の脱毛(左右対称)
筋肉の萎縮
甲状腺機能低下症の併発
糖尿病の併発

【原因】
・加齢 8~12歳の老犬に多く発症します。
・遺伝 代表的な犬種としては、プードル、ダックスフント、ボクサー、 ボストンテリア、
ポメラニアン、テリア種に多く見られます。
・腫瘍腎臓の上にある副腎(ふくじん)という小さな分泌器官をつかさどるのは、
脳内の脳下垂体(のうかすいたい)という部位です。その為、副腎自体や脳下垂体に腫瘍ができると
ホルモン分泌のコントロールが出来なくなり、過剰生成されてクッシング症候群を発症します。
・薬の副作用 腫瘍、アレルギー、炎症などの治療に、グルココルチコイドが用いられることがありますが、
長期的な薬剤投与の副作用としてクッシング症候群の症状が現れてしまうことがあります。

【治療】
腫瘍が原因の場合外科手術となります。
脳内の下垂体腫瘍など、外科手術が困難な場合は、放射線療法が行われることもあります。
投薬治療 
腫瘍を切除できない場合、ミトタンやプレドニゾンなどの副腎皮質の働きを弱める薬剤を投薬します。
投薬は一生涯必要となります。

【予防】
確固たる予防方法はありません。
早期発見・早期治療が何よりも大切ですので、愛犬の様子をよく観察して、少しでも症状が見られたら、
すぐにかかりつけの獣医さんに相談しましょう。