【犬の病気】生殖器系の病気

生殖器系の病気(子宮蓄膿症・乳腺炎・前立腺肥大・停留睾丸)

子宮蓄膿症
【症状】
子宮の内膜が腫れ細菌感染により子宮内部に膿がたまる病気です。

避妊手術をしていないで、子供を産んだことのない、もしくは何年間もの間産んでいない高齢犬で起こりやすいです。稀に1歳ほどの若い年齢で起こることもありますが多くは5歳以降の年齢で発症します。

また、発情期終了後1~2カ月で発症することが多いようです。

症状としては、
食欲がない。
多飲多尿。
陰部からの出血。
発熱。
お腹が膨らむ。
などが挙げられます。

【原因】
 子宮内に細菌が進入することによる炎症が起こる細菌感染が原因です。発情期に子宮の頚部が緩み、外部から病原菌が進入しやすくなる為です。

 子宮蓄膿症への進行は、子宮内膜過形成という要因が関わっています。子宮内膜過形成とは、エストロゲンに晒された子宮内膜が、妊娠しない状態でプロゲステロンの影響を受けるというサイクルを繰り返すことで、異常に分厚くなった状態のことです。出産経験がなく、避妊手術を受けていないメスや、過去に一度だけ出産し、時間がたっている犬などの危険度が高くなります。

また、加齢による抵抗力の低下と共に細菌感染したり、臓器機能の低下によって、
発症する事もあります。

【治療】
基本的には外科的処置になります。
卵巣子宮摘出術を行い、膿がたまった子宮を取り除きます。
この際に子宮蓄膿症に伴った様々な合併症を生じていることも多く、通常の避妊手術と比べてリスクの高いものです。

合併症には軽度(軽い脱水程度)のものから、腎不全、肝不全、貧血や低たんぱく血症(低アルブミン血症)、血液凝固不全、腹膜炎など重度のものまで見られます。
その場合はそちらの治療も行います。


【予防】
繁殖の予定がない場合は、避妊手術をおすすめします。
獣医さんによっては、卵巣のみ取り出す手術を行うところもあるようですが、卵巣を取ることで子宮内膜の肥厚を起こすエストロゲンの分泌を抑制し、子宮を取ることで炎症が起こるそもそもの土台をなくす事から、卵巣子宮摘出術の方が後々安心です。

時期に関しては、最初のヒート前がよいと言われますが、
かかりつけの獣医さんとよく相談しましょう。
乳腺炎
【症状】
乳汁を作り出す乳腺に、細菌感染による炎症が起きた状態を乳腺炎と呼びます。
主な症状としては、乳房の腫れとしこり緑黄色や血液まじりの乳汁発熱食欲不信授乳拒否などがあります。
発情期に入って排卵すると、黄体ホルモンが分泌されます。
妊娠しない場合、排卵からしばらくすると黄体ホルモンの分泌は通常だと終了するのですが、
黄体ホルモンの分泌が過剰だと妊娠してなくても分泌し続ける場合があります。偽妊娠の犬は腹部膨満、
乳腺の腫大、泌乳など妊娠した時の身体の状態や行動が現れ、巣をつくり仔犬の代わりになる玩具に執着したり、
攻撃的になったりします。

【原因】
授乳期に発症しやすい・仔犬の数が少なく、乳汁の生産と供給のバランスが悪いと、
細菌に感染することがあります。
・子犬の噛み付きや引っ掻きによってできた小さな傷から細菌感染することもあります。
・乳汁が過剰に分泌されて目詰まりを起こしたり、細菌感染することで炎症が引き起こされます。 

偽妊娠 メス犬の中には発情が始まってからおよそ2ヶ月たつと、ホルモンの分泌が起こり、
乳腺が張って乳汁が分泌されます。中には「偽妊娠」(もしくは想像妊娠)してしまい、
乳腺が炎症を起こしてしまうことがあります。

【治療】炎症を抑えるために抗生物質と鎮静剤の投与を行います。
細菌感染していない場合は消炎剤やホルモン剤で治療をします。
患部が熱を持っていたり、腫れがひどい場合は冷湿布で患部を冷やすと血液の流入量を減らし、
一時的ですが炎症を抑える効果があります。

授乳中の場合は、授乳は止め、人口哺乳にします。細菌感染を起こしている場合は、
細菌を特定し、適切な抗生物質の投与を行います。
また、抗炎症剤やホルモン剤が投与されることもあります。
乳腺の炎症が悪化し、膿がたまっていたり壊疽を起こしている場合は、患部を切除します。
 
偽妊娠などで発症してしまう場合は、避妊手術をすることで再発を防ぐことができますし、
将来的な乳がんの予防にもなります。 

【予防】
授乳中の母犬と子犬をよく観察し、子犬がしっかり乳を飲んでいるか、
乳腺付近に傷がないかなどを確認しましょう。
また、細菌感染を防ぐため、飼育環境を清潔に保つようにし、早すぎる離乳は避けるようにしましょう。
繁殖の予定がない場合は避妊手術をおすすめします。時期に関しては、最初のヒート前がよいと言われますが、
かかりつけの獣医さんとよく相談しましょう。

前立腺肥大
【症状】
去勢をしていないオスに見られる症状で、加齢により、男性ホルモンのバランスが崩れたりすることで、前立腺が肥大してしまう病気です。

前立腺は、前立腺液を作り出す所で、精巣(睾丸)で作られた精子と前立腺液が合わさり精子が作られる仕組みになっています。

前立腺が肥大することで、前立腺の前にある膀胱とその上にある直腸を圧迫することに繋がります。
膀胱を圧迫する事で、膀胱炎、膀胱炎から腎臓の疾患を引き起こし、
直腸を圧迫する事で、結腸閉鎖といって、便の通り道が閉鎖されるなど、様々な合併症につながる恐れがあります。
この「合併症」が命に関わる事があるのです。

早期発見は非常にわかりにくい病気で、肥大が確認されるタイミングでは、既に他の臓器に影響が出始めている場合が多いようです。

症状としては、
尿の量が減る/頻尿になる→膀胱炎の可能性
便秘→結腸閉鎖の可能性
踏ん張っているが便がでない→結腸閉鎖の可能性
嘔吐→腸閉塞の可能性
血尿→膀胱炎の可能性

【原因】
加齢と男性ホルモン(テストステロン)が影響しているのですが、明確な原因は解明されていないようです。

精巣から分泌される男性ホルモンのバランスが崩れる事で、前立腺の肥大が起こります。
前立腺の肥大には良性の過形成の他、腫瘍性、細菌性によるものなどが見られます。

【治療】
基本的には、去勢手術を行うことで急速に縮小します。

食事療法
前立腺が肥大して腸を圧迫し、軽い便秘程度であれば、食事療法で改善することがあります。
ホルモン剤投与
前立腺肥大が小さければホルモン剤投与により、以後の進行を遅らせます。
手術療法
他の臓器の機能不全を招く程、進行が見られる場合は外科手術によって除去します。

【予防】
一番の予防法は、去勢(精巣の摘出)になります。
早目の去勢手術により、前立腺や精巣に関わる病気も予防が可能になります。

停留睾丸
【症状】
停留睾丸とは、所謂タマタマが通常であれば、生後6カ月齢位で鼠径部最下まで降りてくるものが、降りてこない状態を指します。
精巣は完全に腹腔内にあることもあれば、途中の鼠径管にひっかかっていて股の付け根辺りにある事も。
精巣が腹腔内にあると腫瘍になりやすくなるといわれています。データでは通常の10倍近く精巣腫瘍の発生率が高くなるようです。

【原因】
遺伝が影響していると言われています。
主にはジャーマンシェパード・ボクサー・ミニチュアシュナウザー・ポメラニアン・チワワに多いとされていますが、
小型犬を中心にあらゆる犬種でみられます。
はっきりとした原因はわかっていません。

【治療】
大体生後八ヶ月を過ぎても降りてこない場合、かかりつけの獣医さんに相談しましょう。

腹腔内に残ってしまっている場合、外科的処置になります。
陰嚢とお腹の2箇所を切開し、取り出します。
腹腔内の精巣はほおっておくと徐々に小さくなり見つけにくくなってしまう上に、高い可能性で腫瘍になるため、早いうちに処置をしましょう。

【予防】
タマタマがおりてこないのは、防ぎようがありませんが、
精巣腫瘍だけでなく、前立腺肥大や会陰ヘルニア病気などの病気を避けるための一番の予防は去勢手術をすることです。